下山事件 ★★☆

森達也 新潮社 ; ISBN:4104662011 ; (2004/02/18)

下山事件そのものに関しては、やはり昔の事件としか思えないが、後半、著者の挫折感がビシビシと伝わってくるところが、妙に面白かった。どうしようもないというか、想像だにしない壁に何も出来ず、ただ圧倒されるだけになってしまう著者の諦念にドキュメンタリーの凄みというか、怖さを感じた。作中、下山事件に関わってしまった人達を「下山病患者」と呼び、真相をワクチンに例えるが、その見つかりそうで見つからない部分にドキュメンタリーという手段に内在する深い闇があるような気がする。