デカルトの密室

デカルトの密室

デカルトの密室

結構長文で感想を書いたのに手違いで消えてしまいました。
テンションが下がったので、さらりと感想を。

全編、読者に講義するような展開。読者参加型といえばいいのか、作家の紡ぎ出す物語を堪能するのではなく、作家とともに物語の行き着く先を捜していく。そんな読み手の物語への積極的な介入を求められている作品でした。デカルトの方法的懐疑じゃないけれど、とにかくなにもかも疑えといったような感じで、読むのに時間がかかりましたね。
最後に至る下りが、どうしても納得しづらくて、いろんな感想サイトを巡回してみたけれど、みんな似たような感想でした。*1巡回して思いましたが、評価するひとは極端に分かれていて、それはそれで凄いな、と。*2

で、評価なんですが。
これは面白いですよ。誰にでも勧められる本とは思えないけど、いろいろな人に読んでもらいたい本でもあります。読みながらわかりづらい所があれば、サイトで検索したり、図書館で関連書籍を拾い読みしたり、中高生の頃の読書体験を思い出しましたね。僕も物語信者の一人なんで、最後のケンイチを通して作者が熱く語りだした「物語愛」は照れながらも共感しましたよ。

読み終えてまず思いついたのは、アシモフでもトールキンでもなく*3、ヴェルヌでしたね。センスオブワンダーというか、好奇心の在り様が似ているのかも。

この作品に興味の出た方は、既読の人も未読の人もこのサイトは必見だと思います。

*1:難解すぎてコメント不可。みたいな

*2:一方は最先端のロボット工学をベースにした自我をめぐる「センスオブワンダー」の傑作。一方はあまりに衒学的で自己満足の域を脱していない、テーマも今更感を否めない駄作。いやはや、なんとも

*3:もちろんクイーンでもない

デカルトの密室スラムオンライン (ハヤカワ文庫 JA (800))メモリアノイズの流転現象 (ノン・ノベル)
デカルトの密室」年始からこれにかかり切りです。間違いなく面白いんだけどなかなか脳で咀嚼するのが大変で読み進めません。
その間に脳休め(失礼か?)として「スラムオンライン」と「メモリアノイズの流転現象」を読み終えました。両方とも「デカルトの密室」のテーマにそこはかとなく被っていて、なかなか面白い読書体験でした。

ネタバレ

1日の日記を読んでいたら、反転以外でもどうにもネタバレしているようなので、ちょっと直しました。ついでに「容疑者χの献身」のラストについての感想も追加しました。

年末でネタバレの話題*1があちこちのブログで取り上げられていましたが、僕個人としてはよく巡回するサイトさんの感想・批評は、未読だけど絶対読むだろう本は読み終えてから、興味はあるけどどうしようかなと思う本は、サイトの感想をとりあえず読んで、これは面白そうだと思ったらその本を買います。その際、ネタバレ指定があれば、続きを読むのを控えます。それでも気になって読みたいときは読みますけどね。
ネタバレは未読の人にはマナーのような物ですし、読了した人にとっては新たな発見につながる指針みたいなものだと思ってます。
読書好きで批評・感想サイトが好きな人はこんな使い分けをしていると思うんですが、他の方はどうなんでしょうか。

日常で本の感想を言うようなことはまず無いし、あっても特定な友人たちだけであって、不特定な人のいろいろな感想を聞ける機会というのはそうそう転がっていない。特に僕みたいな作家買いで本を読む人間は新しい作家の本を手に取ることがそもそもない。正直、ライトノベルはネットでの感想を読む事がなければ、手を出すこともなかったでしょう。去年読んだ本では「黒い時計の旅」なんかもそうです。
確かに作家さん側からして見れば、心血注いで書き上げた作品をネット上に許可もなく貼り出されるのは納得いかない部分もあるのでしょうけど、読む方もいい作品にたくさん出会いたいと思っているんです。それはある意味勝負みたいなもので、作家さん達は僕のようなネットに蔓延る有象無象の連中を蹴散らす作品を書き上げて、サイトは発表された作品に応援ないし発破をかけてよりよい読書空間を保ちたいと思ってるだけじゃないでしょうか。中には貶す事に命をかけている人もいるでしょうが、それこそ相手にしても仕方が無いでしょう。

そんな事を1日の日記の反省とともに思いました。しかし過去ログにもいろいろネタバレを書いていそうなんで、徐々に直していかないと…

*1:佐竹彬さんや森博嗣さんの日記の件です

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身

で、年初めの1冊は「このミス」「本ミス」「文春」で三冠を達成したこの作品。
本格かどうかという問題はさておき(個人的には間違いなく本格なんですけどね)、倒叙ミステリーの傑作なのは確かですね。
倒叙物はどうしても完全犯罪の瑕疵に焦点が定まるので、物語の振り幅が狭くなり、登場人物の行動または思考法が不自然になりがちです。もう少し突っ込むと犯人の計画にないイレギュラーなアクシデントなんかが起こるといかにもな造り物めいたものになりやすいといったところですね。
また、犯人当てというミステリーにとって最上級のカタルシス*1を放棄しているため、動機やトリックに新味をつけ加える強引な展開になりやすい。だいたい動機やトリックでのカタルシスは不自然な事が多い上、それを納得させるためにプロットも複雑になり消化不良に陥ってしまいがちです。
倒叙物はミステリー作家にとっては成功率が低く、リスクの高いプロットだと言っても過言でないと思います。それ故に魅力のあるプロットだともいえるんですが。

以下は内容に触れます。

*1:「意外な犯人」ではなく、犯人へと到る論理の組み立てのことです。

続きを読む

カンフーハッスル ★★★☆

監督・チャウ・シンチー 出演・チャウ・シンチー ユン・チウ ユン・ワー ドン・ジーホワ シン・ユー

というわけで、新年初映画はバカ映画でした。前半のベタな掴みもいつも通り。予告編を見ていなかったらもっと笑えたのにと、ちょっと苦笑。冴えない親父やオバちゃんが、物語が進むにつれて格好よく見えてくるのが、チャウ・シンチーらしいバカさ加減で心地いいです。
キャッチコピーの通り「ありえねー」技の応酬は多種多彩で、本当に格好いい。
ただ、格好良すぎて、最後の戦いが、普通に凄く思えてしまいました。

続きを読む