私の庭 浅草篇 ★★★☆

花村萬月 光文社 ; ISBN:4334924263 ; (2004/03/23)

時代劇が続くなぁ、たまたまだけど。といっても、花村萬月。幕末だろうが現代だろうが、書きたいことは変わらない。否応なく翻弄されていく時代と刀の存在意義が曖昧になっていく時代が、書きたいテーマとリンクしやすかったのだろう。天衣無縫な主人公もこの作者の最近の作品では珍しい。これも時代小説という形を取った理由かもしれない。750ページ使って、刀とは何だったのかを書いている。当然そこには武士道やら、階級やら、殺人の意味やらが織り交ざるっているのだけど、それよりも刀を持つということを描きたかったようだ。「構え」という観念になるのだろうか。説明できない何かを、言葉を氾濫させて浮かび上がらせようとしていく作者の手法は、ますます洗練されずに泥臭くなっていっている。この物語も浅草篇と打ってあり、次の舞台も終章で描かれている。あまりに果てしない道程に力が尽きるのは作者か読者か。