家守綺譚 ★★★★

梨木香歩 新潮社 ; ISBN:4104299030 ; (2004/01)

床の間の山水画から亡き親友が現れたり、庭のサルスベリに惚れられたり、河童が古道具屋で売られたり、小鬼とふきのとうを探したりする小説家の日常、そう、あくまでも日常なんだよ。荒唐無稽なのに、どこか懐かしく感じられるのは、夏目漱石泉鏡花などの明治の作家を思い出すような文体のせいもあるけど、誰もが心のなかのどこかに置いてある幻想的な風景を思い出すからじゃないのかな。小鬼や河童、龍神たちがそばにいる日常。読んでいる間、ずっと宙に浮いているような、そんな解放感を味わえる連作短編集。