青い翅の夜 王国記Ⅳ ★★★

花村萬月 文藝春秋 ; ISBN:4163225609 ; (2004/01/30)

主人公・朧がとうとうヴィジョンを獲得した。ヴィジョンは言葉で説明することが出来ない直截的な感覚、らしい。らしいと言うのは見なきゃわからないからだ。朧は、ヴィジョンを月の光が差し込む長方形の空間、また淡く翳る雲の影と話す。王国の彼岸と此岸を分ける重要なテーマになってるようだ。しかし、正直なんだかよくわからない。朧を兄と慕うジャンのように空想か妄想にしか思えない。これは小説なんだ。言葉以外では書かれていない。たぶん、この二律背反が今後の王国記に繋がりそう。ジャンは朧の限界を知り、教子は自らの足で立ち上がる、そして王国の王・太郎は朧を見ていない。孤独になりつつある朧の物語が始まりそうだ。