総統の子ら ★★★

皆川博子 集英社 ; ISBN:4087746674 ; (2003/10)

戦争物は苦手だ、と古処誠二の「接近」を読んだ時も書いたけど、やっぱり苦手。謀略サスペンスなんかは好きなんだよ。佐々木譲逢坂剛もよく読むし。これが軍人とは?愛国とは?つまり戦争とは?とかになるとちょっとダメ。登場人物が岐路に立つとページを捲る手を停めて考えてしまう。でも、答えなんて出ないから変なしこりを残したまま読み進める。これが辛い。「死の泉」は同じ時代と舞台を扱ってるけども、そんな物語じゃないからすんなり読めた。でも、これは3日かけて読んだ。こんな読みやすい文章なのに、これだけ時間がかかるとは自分でも驚き。なんだけど結局、自分のなかのしこりは残ったまま。何が正義とか、どの状況で犯罪になるのかとか、純粋は善悪を判断できるのかとか、神は在るのかとか。答えは出なかったけど、このすべてを一つの物語として終わらせる皆川博子の手腕は凄い。あとがきを読むと、実際に戦車まで乗ってるらしい。老いてますます盛ん、といったところか。この本、ドイツの人たちが読んだらどう思うのか聞いてみたい。