喜劇ひく悲奇劇 ★★

鯨統一郎 角川春樹事務所 ; ISBN:4758420386 ; (2004/08)
喜劇ひく悲奇劇 (ハルキ・ノベルス)
2ページに一つの割合で回文を入れる、その執念は驚異的です。泡坂妻夫の「喜劇悲奇劇」を読んでいないので、比較は出来ないんですが、回文へのこだわり方はこちらの方に軍配があがるんではないでしょうか。まあ、当の泡坂先生にはまったく興味のないことでしょうが…。
正直、泡坂作品より流水大説の方に近いですね。ラストの意外な犯人にしても、大説のある作品を思い出しました。
とにかく回文だらけなんで、実に読み辛かったです。「文章魔界道」を書いたのにまだこんなことに挑戦する作者はやっぱりどうかしてると思いますが、嫌いになれませんね。ただ量産が続いているので、「邪馬台国はどこですか?」レベルの作品がなかなか出ないのが残念です。
とはいえ、こういう作家が一人はいるというミステリ業界を思うと、このジャンルは出版社にしても読者にしてもいい関係が続いているのだと改めて思います。
作品中、好きな回文は『うかつだ榎木津礼二郎。路地入れず木の枝つかう』