村田エフェンディ滞土録 ★★★☆

梨木香歩 角川書店 ; ISBN:4048735136 ; (2004/04/27)

村田君の譲れない部分が好きだ。矜持と言えば格好はつくが、ただ単に負けず嫌いなだけ。でもそこがいい。何もかも受け入れては目的を見失う。ただ拒絶するだけでは手段が見つからない。そんな実直な青年、村田君の世界と向き合う視線がゆっくりと積み重ねるように心に染みてくる。歴史を知れば知るほど世界に国境はないのだという単純な理は誰もが気付いているはずのに、どうしても複雑になってしまう現状を止めることが出来ない。終盤「友よ!」と甲高く叫ぶ鸚鵡は、ただ遣る瀬無い想いを張り上げてるだけじゃなく、残された者が未来に向けて叫ぶ決意表明であるような気がするのだ。