ユルユルカ ★★★☆

高里椎奈 講談社 ; ISBN:4061823647 ; (2004/03)

切れない作家だと、読む度に思ってしまう。心に残る一冊という作品はないんだけど、悪くはない小説を読ませる。基本的に作家を追いかけて本を読む性質なんで、もういいかなと思うまでは読みつづける。高里椎奈は、僕の中でそのボーダー上の作家。佳作ではあるんだけど、印象に残らない。「悪魔と詐欺師」ぐらいか。そこで今作。中篇2本を現実とファンタジーの二つの視点で書いて最後にいい話でしっかりまとめている。これはいい。今までの登場キャラを使いながら、要所を押さえミステリ好きとファンタジー好きを楽しませる構造になっている。この人の資質は会話文のセンスもさることながら、重層的な構成の見せ方にあるような気がする。