楽園の知恵 あるいはヒステリーの歴史 ★★★☆

牧野修 早川書房 ; ISBN:4152085312 ; (2003/11/26)

グロテスクが笑いに繋がるところが面白い。例えば「インキュバス言語」の偏執的なポルノ文が創世記に変わる瞬間なんかがそうだ。逆にいうと、笑いがグロテスクなモノに変わることがあるということ。「踊るバビロン」の脚注が本文を取って食う感覚。「演歌の黙示録」の紅白歌合戦。ニヤニヤ笑いながら読んでいたものが一転して恐怖に変わる。何が真実で何が虚構なのか、その不安定感を演出しているのは、実はコツコツとか努力とか真面目といったこの作者の真摯な部分に裏打ちされているのだろう。巻末の「付記・ロマンス法に」で描かれる作家の皮肉なラストはそんな作者の真面目さと悪ふざけな部分が出ているような気がする。