赫い月照 ★★★★

谺健二 講談社 ; ISBN:4062117614 ; (2003/04)

「過剰」それこそが本格だった時代に、洗礼を受けたぼくとしてはこの作品にただ平伏したい。正直、作者のコントロールが効いていたとはとても思えないこの作品が、論理ミステリとして成功しているとは思えないが、この作品で終わってしまってもいいと言う作者の熱い思いが(だって、このラストだよ!)最後までページを手繰るのを止めさせなかったのは事実。全篇を通して語られる「怒り」が、そのまま本格ミステリという形式に透過されている。洗練されつづける「本格」が忘れてはいけない「怒り」がここにある。