夜のミッキーマウス ★★★

谷川俊太郎 新潮社 ; ISBN:4104018031 ; (2003/09/23)

『百三歳になったアトム』

人里はなれた湖の岸辺でアトムは夕日を見ている
百三歳になったが顔は生まれた時のままだ
鴉の群れがねぐらへ帰って行く
もう何度自分に問いかけたことだろう
ぼくには魂ってものがあるんだろうか
人並み以上の知性があるとしても
寅さんにだって負けないくらいの情があるとしても
いつだったかピーターパンに会ったとき言われた
きみおちんちんないんだって?
それって魂みたいなもの?
と問い返したらピーターは大笑いしたっけ
どこからかあの懐かしい主題歌が響いてくる
夕日ってきれいだなあとアトムは思う
だが気持ちはそれ以上どこへも行かない
ちょっとしたプログラムのバグなんだ多分
そう考えてアトムは両足のロケットを噴射して
夕日のかなたへと飛び立っていく

そういえば「鉄腕アトム」の歌詞はこの人の作詞だったなと思い出して。