誰か ★★★

宮部みゆき 実業之日本社 ; ISBN:4408534498 ; (2003/11/13)

読み終えたあと、冒頭の西条八十の詩がぐっと心に迫る。

          暗い、暗い、と云ひながら
          誰か窓下を通る。 


          室内には瓦斯が灯り、
          戸外はまだ明るい筈だのに 


          暗い、暗い、と云ひながら
          誰か窓下を通る。

主人公の気の弱さがこの小説に書かれた悪意から救ってくれてはいるんだけど、この詩から滲み出る怖さが拡散してしまったような気がする。どうしても「終わりよければ全てよし」みたいな感覚になってしまう。誰も救われてないし、明るい未来がやってくるとは書かれていないのに。でも、それが宮部の凄さに繋がってるからなぁ。先の見えない悪夢を物語の中だけで収束するように書くのは本当に難しい。